「いち松の歴史」

塗師屋について。

塗師屋いち松は、三代続く塗師屋です。一松春男が二代目、現在、聡司が三代目となります。塗師屋としては三代ですが、輪島塗は古くから続く輪島の基幹産業ですので、一松家も代々輪島塗に従事する家系であり、初代の母も研ぎ物師として輪島塗に携わっていました。

塗師屋というのは、輪島塗の工程で文字どおり「塗り」の部分を担当するところですが、漆器を実際に販売するセクションでもあります。塗師屋は、顧客と商談をし、注文を取る営業マンでもあり、輪島塗の各作業する職人に要望を伝えるディレクターでもあり、どういった製品にするのかなどのプロデューサー的な役割をも担っています。

お客様と商談し、どのような形の物、柄が好みかを理解し、イメージをデザインします。輪島塗の職人は木地職人、下地職人、中塗り職人、上塗り職人、蒔絵職人、沈金職人、研ぎ物職人、蝋色職人、と各工程に専門の職人が存在します。直接お客様と商談する塗師屋は、

①木地の種類を決めて木地屋に依頼
②下地職人に下地作業を行ってもらう
③塗師に中塗、小中塗、上塗りを行ってもらう
④蒔絵職人、沈金職人に加飾してもらう
⑤蝋色職人に磨いて艶を出してもらう

という流れになっています。

2代目 一松春男について。

二代目となる塗師の一松春男は、塗師屋としての生業を継ぎ、
特に「塗り」にこだわった職人として、現在も独特の世界観を追求すべく、工房で作品を作り続けています。

輪島塗職人
一松春男(いちまつ はるお)プロフィール

1945年、輪島市生まれ。27歳まで2級自動車整備士として働く。その後、家業の輪島塗に従事。1996年に金沢市主計町で「塗師屋 うるしの木」を開店。テレビや雑誌などで輪島塗の修復士として紹介されました。その活動が、アーティストの田原桂一氏の目に留まり、彼の依頼で塗った作品が婦人画報に掲載され、東京庭園美術館にも展示されています。その後も様々な作品に携わっています。

工房について

全工程一工房管理。

輪島塗は、器を形作る「木地づくり」、木地に漆を塗る「漆塗り」、その器に沈金などで装飾する「加飾」の3つの段階、のべ約100工程を経て製品化されます。「塗り」の作業は、そのうち23工程ほどになります。一般的にはその工程は複数の工房に分業化されていますが、いち松の輪島塗は「塗り」の工程すべてをひとつの工房で行っているのが特徴です。輪島塗は、一般的には、塗りの作業だけでも、工程の数だけ別々の職人が行っています。確かにその職人はその専門のプロではありますが、他の作業工程に干渉しなくなりイメージも共有しづらく、工程ごとにクオリティがばらばらになってしまいます。いち松は、塗りの作業を分業ではない「全工程一工房管理」することにより、技術や品質にかたよりのないクオリティの高い製品を提供することができます。

「直し物(なおしもの)・金継ぎー修繕・メンテナンス」

輪島塗では、修理品を直し物(なおしもの)と呼びます。いち松では、漆器の破損やくすみなど個々の状態に合わせた修理・補修も承ります。輪島塗は、自然の素材しか使っておらず修理の際も同じ素材を使うので、馴染みやすく、修理後は新品と同様の仕上がりとなります。専門の職人が手間暇をかけて行いますので少々時間はかかりますが、大切な品をより長くご愛用いただけるよう尽くします。輪島塗に限らず漆器の修理・補修やリメイクなどお考えの方はお気軽にお問い合わせください。

工房概要

私たちの工房は輪島市中心部から少し離れた、山と川に囲まれた自然豊かな場所にあります。鳳至川を中心に木地屋や塗師屋など、中小の輪島塗を支える工房が点在しています。どの工房も、代々、伝わる技術で輪島塗を支えています。塗師屋である「いち松」もそのひとつです

工房
塗師屋 いち松
〒928-0041石川県輪島市中段町長口37-4
TEL/FAX0768-22-7546

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