輪島塗の歴史は古く、現存する最古の輪島塗は室町時代の大永4年作と伝わる重蔵神社の旧本殿の朱塗扉といわれています。現在の輪島塗の技術が確立したのは江戸時代前期で、その堅牢さで高い評判を得ました。その後、献上品として装飾性も求められ江戸中期の享保期に沈金が、江戸後期の文政期に蒔絵が始められ、現代の輪島塗の形ができあがりました。

特徴

輪島塗の製作工程は、薄手の木地に、生漆と米糊そして焼成珪藻土を混ぜた下地を何層にも重ねる作業が行われます。この手間暇が、輪島塗の堅牢性を支えています。さらには漆器の表面に絵を彫り、金箔や金粉などを入れる装飾技法沈金や、漆で絵や文字などを描き、金、銀や色粉を蒔いて表面に付着させる蒔絵などが施されます。いずれの工程も高い技術と想像力が必要とされます。

輪島塗の定義

「伝統的な工芸品産業の振興に関する法律」の定める輪島塗の定義

伝統的な技術または技法

・下地塗りは、次の技術または技法によること
・木地に生漆を塗付した後「着せもの漆」を塗付した麻または寒冷紗を用いて「布着せ」をすること。
・生漆に米のり及び「輪島地の粉」を混ぜ合わせたものを塗付しては研ぎをすることを繰り返すこと。
・上塗りは、精製漆を用いて「花塗」または「ろいろ塗」をすること。
・加飾をする場合は、沈金または蒔絵によること。
・木地造りは、次のいずれかによること。
・挽き物にあっては、ろくろ台及びろくろかんなを用いて形成すること。
・板物または曲げ物にあっては、「こくそ漆」を用いて成形すること。

伝統的に使用されてきた原材料

・漆は天然漆とすること。
・木地はヒバやケヤキ、カツラもしくはホオノキ、またはこれらと同等の材質を有する用材とすること。

工程

輪島塗は、器や箱、箸などのベースとなる木を削って形づくる「木地」、木地の下地に布を貼り、幾重にも漆を塗る「きゅう漆」、塗り終えた器に彫金や蒔絵を施す「加飾」と大きく3工程に分類され、さらに各工程で細分化されおおよそ124の工程を経て製品化されます。

木地

原木を製品のかたちに切り出し彫りを施す作業をいいます。一般的には塗師屋と木地の工程に携わる木地屋とは独立していますが、お互いに上質な輪島塗を作るうえで重要な役割を担っています。木地には椀木地、重箱や膳などの指物木地、お盆などの曲物木地、座卓などの足の朴(ほう)木地などがあり、それぞれに専門の職人がいます。

きゅう漆

いわゆる「塗り」の工程で、大きく「下地造り」、「中塗り」、「上塗り」の3工程を踏まえて、基本の輪島塗の製品となります。輪島塗で最も重要なのは下地造りです。住宅を建てる時も、基礎(下地)がしっかりしていないと時間が経てば様々な問題が発生します。漆器でも同じように下地造りを疎かにすると良い製品はできません。下地造りは、「布着せ」、地の粉を使った下地を複数回にわたって塗る「地塗り」、下地を塗るごとに行われる「研ぎ」が行われます。中塗漆で丹念に塗る「中塗り」、最上級の漆で塗り上げる「上塗り」を行い、いよいよ製品に近づいてきます。いち松はこの一連の「きゅう漆」の工程を一つの工房で完結さる「全行程一工房」システムを採った稀有な塗師屋です。

加飾

上塗りをした製品に、沈金や蒔絵を施し、製品にデザイン性を与える作業を指します。沈金には沈金職人、蒔絵には蒔絵職人とそれぞれの職人が存在し、各々の技量で堅牢な輪島塗にさらに付加価値を与え、オリジナリティのある製品や顧客の要望に沿った意匠の製品を世に送り出します。特に、沈金は厚い下地が無いとノミで彫ることが出来ないため、輪島塗だけの特殊な技法といわれています。

金継

金継とは輪島塗のような木製の器はもとより、陶器や磁器の割れや欠け、ヒビなどの破損部分を漆を使用し、接着や埋めを施し、金などの金属粉で装飾して仕上げる修復技法のひとつです。金繕い(きんつくろい)とも言われ、繊細な作業を得意とする輪島塗の職人は全国からの器の修理を請け負っています。

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